LINE
予約
WEB予約
アップが遅れてしまい申し訳ありませんでした。
今回、2014年にアメリカ肝臓病学会のオフィシャル雑誌である「Hepatology」に報告された非アルコール性脂肪肝疾患 (NAFLD)に対して魚油(イワシの油)から抽出したDHA, EPA製剤を投与したところ脂肪肝の改善効果を認めたとの論文を紹介したいと思います。
ちなみにこの薬剤は日本では「ロトリガ」の名称にて武田薬品から発売されています。
ヨーロッパでは「Omacor」との名称で販売されています。論文はイギリスのグループが行っている関係でOmacorの名称で使用されています。
適応疾患は高脂血症になります。
論文のタイトルは
Effects of Purified Eicosapentaenoic and Docosahexaenoic Acids in Nonalcoholic Fatty Liver Disease: Results From the WELCOME Study
論文の出典は Hepatology (60), 1211-1221, 2104 です。
この論文ではNAFLD患者を次のFig. 1のごとく、DHA, EPA製剤投与群51例とプラセボ(偽薬)投与群52例にて検討しています。
臨床研究が実行できたのが95例で、そのうち91例にMRIにて肝脂肪を測定するMRSという検査を用いて脂肪肝の程度を評価しています。
ちなみにこのMRSというのは、小生が消化器内科外来を行っている施設でも測定しており、かなり正確に肝臓の脂肪の程度を測定できます
プラセボ群とDHA, EPA製剤の投与群での治療開始前の背景をTable 1に示します。
一般的に有意差検定であるP value 0.05つまり5%以下を有意差ありと判定しますので医一部のデータに差はありますが、おおむねきれいにわけられていると判断できます。
これらのグループに一方はプラセボ投与して、もう一方のグループにはDHA, EPA製剤 4g /dayを投与し、15-18ケ月間投与して評価しています。
ちなみに日本での「ロトリガ」の常用量は2g /dayであり。2gでは効果が不十分と評価したときに倍量の4gが投与可能となります。
Table 2 にプラセボ群とDHA, EPA製剤加療群における治療前後の血液生化学データおよびMRIで皮下脂肪と内臓脂肪の推移を示しております。皮下脂肪はsubcutaneous fat、内臓脂肪がVisceral fatであります。
とくにDHA, EPA製剤投与により内臓脂肪、皮下脂肪に変化がないのがわかります。
Table 3にMRSにて評価した肝脂肪の比率をLiver fatにて表しています。
DHA, EPA製剤投与群では23.0%から16.3%に有意差をもって脂肪肝の改善効果を認めています。一方、プラセボ群では脂肪肝の減少効果は認めていません。
Fig.3にDHAが2%以上上昇した群とそれ以下の群で分類すると、DHAが2%以上上昇した群が脂肪肝をより減少させたデータが示されています。
EPA製剤もSREBP1c抑制効果から脂肪肝の改善が見込まれますが、今回は出典しませんが米国で行われた治験にて(ちなみに小生の留学先の州立大学です)、EPA製剤ではNASHの組織学的改善は見込めなかったとの結果がでております。
今回示された論文のごとくDHA製剤は脂肪肝抑制効果を示したと言えます。
そのような点からDHA, EPA製剤は、少なくとも脂肪肝の改善効果が期待できるのではと推察されます。
実際、学会に発表はしていませんが、小生の担当している外来の患者様でもDHA, EPA製剤の一日4gつまりロトリガ2包投与によりMRSにて脂肪肝の改善を認めています。
2gつまり一包のみでは効果は十分ではありませんでした。
英国および日本にて同じ製剤にてNAFLDにおける脂肪肝改善効果を認めたとのことは、DHA, EPA製剤が脂肪肝の改善効果を有するとの一つの根拠になりえるかもしれません。
渡辺内科クリニックでも高脂血症を合併したNAFLD(非アルコール性脂肪肝疾患)の患者様に対して積極的にDHA, EPA製剤の投与を行っています。
クリニックですのでMRIを用いたMRSにて脂肪肝の改善効果はみれませんが、肝フィブロスキャンについているCAPとう機能を用いて脂肪肝の数値化した評価は可能です。
また希望される患者様にはMRSを受けられるように大学病院もご紹介しております。
脂肪肝が気になり、DHA, EPA製剤による加療に興味を持たれた患者様はどうかお気軽にご相談ください。