銀座しまだ内科クリニック

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銀座しまだ内科クリニック コラム

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NASHを合併した2型糖尿病患者に対してSGLT2阻害剤を投与すると糖尿病の改善だけでなくNASH、脂肪肝の病態も改善する。

NASHを合併した2型糖尿病患者に対してSGLT2阻害剤を投与すると糖尿病の改善だけでなくNASH、脂肪肝の病態も改善する。

 

小生は現在、東京女子医科大学 八千代医療センター 消化器内科の非常勤講師を務めさせていただいております。小生が八千代医療センターに常勤していた時に、日本肥満学会(2015年 名古屋)で発表させていただいたNASH、糖尿病、SGLT2阻害剤についての演題をなるべくわかりやすい表現にて掲載させていただきます。

 

【演題名】

糖尿病、NASH患者におけるMRスペクトロスコピー(MRS)を用いた肝代謝産物の評価とSGLT-2阻害剤投与による肝改善効果(2015年 日本肥満学会 名古屋)

 

【背景】

SGLT2阻害剤は、過剰なブドウ糖を尿中に排泄する新しいタイプの糖尿病治療薬である。正確には近位尿細管でのブドウ糖の再吸収を抑制して尿中にブドウ糖を排泄させる。

その結果、適正に服薬することにより糖尿病の改善のみでなく、3-5kgの体重減少さらに腹囲の減少つまり内臓脂肪の減少が可能な薬剤である。

 

NASHは病態の背景に内臓脂肪蓄積を基盤とし、メタボリックシンドロームの肝での表現型との考え方がある。このことはNASHを合併した肥満を有する2型糖尿病患者に対してSGLT2阻害薬を投与することにより結果的にNASHが改善する可能性が示唆される。

 

NASHにおいて肝脂肪量の測定は診断,治療経過に重要な因子であり正確に測定する必要がある. MR spectroscopy(MRS)は,MRIを用いて代謝物の磁気共鳴信号を周波数解析し代謝物の種類や構造を測定する方法であり,非侵襲的に肝脂肪や肝グリコーゲンの測定が可能である.

【目的】

今回,3.0T MRI(高磁場MRI)を使用し,得られたデータをMRS解析ソフトであるLC modelにより解析した.

さらに我々オリジナルの水信号を抑制し,目的代謝物の信号強度を明瞭にするいわゆる「水抑制処理」を行い、肝脂肪量がどこまで肝組織所見と一致するか超音波エラストグラフィー(肝フィブロスキャン;fibroscan)検査時に得られる肝脂肪データ(CAP;Controlled Attenuation Parameter)も含めて評価した.

 

次にNASHを合併した2型糖尿病患者に対してSGLT-2阻害剤を投与し、投与前後でMRSを施行し肝代謝産物の推移を測定し、糖尿病のみならず肝代謝産物にも改善効果を認めるか評価した.

 

【方法】

① 脂肪酸量の判明している食品、今回は脂肪分2%の豆腐にて,LC modelのみより水抑制処理を加えた方がより正確な測定であることを確認する(ファントム試験)。

 

② 生検にて診断したNASH患者36例について,肝病理所見の脂肪量にてNAFLD Activity score (NAS;NASHの活動度をみるスコアー。薬剤治療の効果判定によく用いられる)に準拠し5%未満をS0, 5-33%をS1, 33-66%S2, 66%以上をS3と3群に分類した.

肝生検直前にMRSと肝フィブロスキャンを施行し,MRSとCAP 値(肝フィブロスキャンによって得られる肝脂肪の程度)の結果が肝病理の脂肪所見と一致するか評価した.

 

③ MRSにて肝に貯蔵されたぶどう糖である肝グリコーゲン量を測定し臨床検査値との相関を評価した.

 

④ NASHを合併した糖尿病患者12例に対して、SGLT-2阻害剤投与前と投与後12週後にMRSを施行し,肝脂肪および肝グリコーゲンの推移を評価した.

 

【結果】

① MRSでのファントム試験では脂肪分2%の豆腐を用いてMRSを施行したところ従来のLC modelのみによる解析では脂肪分7.59%と実際の数値より高値を示した。

一方、水抑制処理を加えると1.94%とより近似値を示した。

 

 

 

 

 

 

 

 

②  NASH患者でのヒト肝組織の脂肪の程度も5%のように脂肪肝の程度が軽度であると通常のMRSでは10.2%と高値を示したが、水抑制処理することにより、5.73%とより正確に測定できることを確認した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

NASH肝組織での肝線維化と肝フィブロスキャンでのE値(肝硬度)は相関した。

 

 

 

 

NASH肝組織での脂肪肝の程度とMRSでの脂肪量は有意(p<0.001, r=0.839)に肝組織と一致した.

 

 

 

 

肝フィブロスキャンで得られた脂肪肝の程度を表すCAP値も有意(p=0.027, r=0.533)に肝組織所見と一致したが,相関係数はMRSの方が高値であり、今回の結果では脂肪肝の程度はMRSの方が優れているとの結果であった。

 

 

 

 

 

③ 肝グリコーゲンは肝脂肪の程度と正の相関を有意( p<0.0001 )に認めた.

 

 

 

 

今回の検討では、HbA1cやHOMA-IRと肝グリコーゲンは相関を認めなかった。

 

 

 

 

 

④ NASHを合併した2型糖尿病患者に対して、SGLT2阻害剤にて加療した結果、HbA1cの改善、体重減少のみでなく、ALTの改善およびMRSにて肝脂肪、肝グリコーゲンの減少が認められた。

 

 

 

 

 

 

 

【結語】

NASHを合併した糖尿病患者に対しSGLT2阻害剤投与により肝脂肪の改善、肝グリコーゲン、ALTも減少し糖尿病のみならず肝病態の改善も認めた。

 

当院ではNASH、脂肪肝もしくは内臓脂肪、肥満を合併した2型糖尿病患者に積極的にSGLT2阻害剤の投与を行っております。

検診で糖尿病を指摘されて、お腹の脂肪が気になる方や脂肪肝を指摘された方はどうぞお気軽にご相談ください。

 

当院は予約制ではありません。

 

可能である限り当日に保険診療にて肝フィブロスキャンを施行し結果説明も可能です。

肝フィブロスキャンをご希望の時は空腹(午前診療なら朝食を、午後診療なら昼食をお待ちいただいて)で来院いただけると、より正確なデータが得られます。